ビットコインをダーウィンの進化論に当てはめてみた
中本哲史氏の開発したブロックチェーン(*ビットコインの取引履歴に関するデータベース)の出現から現時点から6年がたち、多くの人がビットコインを金融の未来を阻害するものとして見るようになりました。
簡単に言ってしまうと、お金はプログラム編纂が可能な台帳のようなものだということです。現在では、簡単なスクリプト言語で誰でも自分自身の仮想通貨を造り出すことができ、コミュニティの価値を示すのにそれに応じた様々な価値をコード化することもできます。
経済学者の主張するものは、ビットコインを自由主義的性質をもったウォールストリート好みの通貨だとして、はねつけてしまう帰来がある一方で、エコノミストは現代の貨幣理論を通してこの新しい革新の流れを理解しようとしています。
ですがその作りをよく調べてみると、この技術の展望がいかに政治的思想を超えたものだということが分かります。事実上ビットコインは人間固有の性質を体現したものであり、種の進化を支える革新そのものだということが理解されることでしょう。
ダーウィンの視点
19世紀に自然科学者であるダーウィンによって進められた人類の展望は、人間の性質に関していくつか矛盾を含んだものでした。
ほとんどの人はダーウィンの”種の起源”にある遺伝的変化、自然淘汰や適者生存に関する理論をよく知っていることだと思います。ですが彼の二つ目の著書”人間の由来”についてはほとんど知られていません。その書の中でダーウィンは、人間固有の利他主義と愛に基づく人間の高い質の認識について意見を述べています。
これらの一見すると真逆の性質は、ビットコインにおいて生成されつつある2つの両極したイメージにも見られるようです。
ビットコインは投機家の操作、シルクロードスキャンダル(*薬物などの不正販売サイトでビットコインが取引として使用された)やマウントゴックス解体などの出来事にみられるように人間の悪の部分につながっていると思われる一方で、チャリティーやチップとして大きく使用されるようになったことから利他的努力を喚起するものとしての側面を持ちます。
これら2つの傾向はテクノロジーの独特な設計に起因しています。ビットコインは今まで存在していなかった貨幣様式をもたらしたのです。
一見すると、限定された供給であることからビットコインは金にも似た資産です。これはなぜビットコインは投資家や投機家にとって魅力的なのかと、そして貯蓄を動機付けさせることによるデフレが起こる可能性があり、エコノミストから批判される理由の一つになっています。
ですが、これがビットコインの全てではありません。金と違って、ビットコインは無限に分割することが可能なのです(小数点8桁程細かくしたり、同意が得られればもっと細かくすることも)。ビットコインの持つ希少性(供給は有限)と豊富さ(無限に分割可能)と共に、それを発掘することによりダーウィンの唱える人間の持つ二面性が強く示されることになるのです。
ビットコインネットワークの中枢にある発掘場はまるで所有された生協のようです。彼らは相互に助け合うことによって自己管理をし、かつ資源をシェアすることで協力する、一方競争もしています。
デジタルスケアシティ
基となるビットコインのプログラム言語はオープンソースです。
企業が所有するソフトウェアと違い、誰でも読む事が可能でコードを組み直したりできます。つまりブロックチェーンは誰に対しても開かれているということになります。
オープンソースのコンセプトは長きに渡って排他的資本の流通に対し挑戦し続けてきました。JD Moyerはブログ記事”オープンソースが資本主義を打ち壊すのを見る”中で、資本主義はいかに資源が限られていて、それを個人所有し身内のみに分配しているかという点について述べています。彼は、オープンソースがどのように生産コストの切り下げや限られた分配によってもたらされた資源不足に対抗していくかを論じました。
BitTorrentのファイル共有プロトコルの発明は、所有者は支配的である文化によって抑圧されていたグループ間の利他的な行動の誘発を促しているようです。
今のところ、このシェアするという傾向はお金が関わっているのではなく、個人主義や起業家精神とも切り離されて大きくなっています。ブロックチェーンの発明は、資本主義や社会主義からのイデオロギー的分離に示されたしばしば相反する人間の性質(シェアすることによる協力をするということと、安く手に入れたいという思いから競争をすること)を繋げるという新しい道筋を示してくれました。
ナカモトサトシの完璧な市場
ブロックチェーン技術の主な発明はその両面からくる問題解決です。彼の作ったハッシュキャッシュで、暗号作成者であるAdam Back氏はデジタルスケアシティ(デジタルの世界において希少性であるものを作る方法)というコンセプトを紹介しています。
IBMのRichard Gendal Brown氏はいかにこの希少性がビットコインの必要な本質であるか、つまり”手間なしでの送金”を可能にしていると述べています。
ビットコインの登場までに、デジタル世界において希少性というのは、著作権法や所有権によるアクセス制限などにより人工的に作られていました。現在では、ビットコインはアルゴリズム的合意によりこの希少性を作りだしています。
シリコンバレーの技術起業家であり作家でもあるAndreas Antonopoulos氏は中本哲史氏は新しい通貨を造り出しただけではなく、世界で初めての”完全な市場”を我々にもたらしてくれたと認めています。
予測不可能で繰り返しのない無秩序なランダム数の中で見つけられる数学的解を通して、新しいビットコインは造り出されます。DNAコードと似ているように、全てのビットコインは独自の細胞のようで複製されることはありません。細胞自身は増殖しませんが、その本質を失うことなくより大きな有機体としての健康や成長をサポートするために分割していきます。
豊富さという通貨
ビットコインの生体環境とは異なり、現代の不活発な世界では中央の操作により市場に現れる自然発生的な勢力は消えてしまいます。それによりシステムは機械的で容赦のないマシーンになるのです。生気を失ったシステムはそれ自身では成長することはありません。寄生的になり、債務を負わせたり賃借を求める者から盗んだり搾取的にすることにより維持するようになります。
このパラダイム内では、希少性という言葉により人々は内部に閉じ込められ、恐れを増長させますが、それをうまくコントロールして利用できたものは報われます。人間の冷淡な側面は、人間性が冷血なサイボーグへと変化させられ、無人攻撃に従事させるような任天堂のコンピューターゲームの仮想現実化や大量労働搾取、金融の植民地化へと全世界を移行させたのです。
ブロックチェーンの登場は、そのような専制的なコントロールシステムからの脱却する手がかりとなるものなのです。
中本氏の提供する完全な市場は、説明責任をもつシステムを提供してくれます。ルールを遵守するものは報われ、人間のミスしやすい性質を制御しシステムをしっかり守ります。また、攻撃的で競争的な人間の性質を導いてくれて、それを技術の中へ建設的に組み込ませるように働くのです。
公共の資産台帳としての役割のブロックチェーンは、それ自身も資産であったりします。ネットワークが成熟するにつれ、システムの開発を助けるビットコインの希少性と価値は、無限の分割からなる拡大的特徴を伴って実現します。膨れ上がることのない確かな価値を通して豊富さは作られ、人間のシェアをする性質を生かした貨幣が生まれるのです。
我々の種としての進化は、宗教的教理、また家父長制や経済的政治的抑圧の下長い間停滞していました。
人間の欲の集中化により、人間性は何世紀にも渡って押さえつけられてきました。しかし、コンピューターコードに記されているちょっとした数学が新しい可能性を解き放ってくれたのです。コントロールの度合いが取り外されるにつれ、人を強要したり、奴隷化するために用いられていたお金が、私たちのDNAに組み込まれている固有の、そして他人のためになるよう行動する能力を実現化させるための流れとして変化させられるのです。
進化の道筋はこれで明らかになったでしょうか。許可などは必要もないのです。それぞれの個はさらなる進化を遂げるために自由に応じることが出来るのです。